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M&A DIRECTIONS PUBLICATIONS SERIES 30 May 2017

M&A法務デュー・ディリジェンスを最大限に活用する

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今回のM&A Directionsの記事では、M&Aにおける法務デューディリジェンスを最大限に活用する方法を見ていきます。実務に活かせる法務デューディリジェンスへの取り組み方、法務デューディリジェンスプロセスの管理方法、交渉における法務デュー・ディリジェンスの利用方法などの実用的なヒントをご提供します。


なぜ法務デュー・ディリジェンスを実施しているのか

買主はご用心

この問いに対する慣例的な答えは、「買主の危険負担」又は「買主はご用心」です。ほとんどのコモン・ロー法域において、株式又は事業の売主は、関連す���全ての情報を買主に開示しなければならないという一般的な義務を負っていません。独自の調査を行うのは買主の責任です。一般法では、詐欺又は不実表示がない限り、買主は、自らの購入した事業が自らの理解とは異なっていたことに後で気づいたとしても、保護されません。買主は、デュー・ディリジェンスにより、購入しようとしているものの内容やその価値についてある程度の安心感を得ることができます。

何を買おうとしているのか

複雑な事業の場合、自らが購入しようとしているものを理解するには、多大な調査と分析が必要です。基本的なレベルでは、デュー・ディリジェンスの目的は、自らが購入しようとしているものが自らの期待どおりであるか否かを調査又は確認することです。

購入しようとしているものは、自分が考えているとおりのものなのでしょうか。この問いに答えるためには、重要な法的契約、資産、免許及び認可、法令遵守の履歴、知的財産権、事業の従業員及び事業慣行、並びに潜在的な課題を理解する必要があるかもしれません。

買収しようとしている企業の負債はどのようなものでしょうか。例えば、重要な契約、金融商品、税金、従業員、年金、訴訟及び紛争から発生し得る、その企業が抱える実際の債務、潜在的な債務及び偶発債務を理解する必要があります。

どのくらいの価値があるのか

多くの場合、買主は、市場ベースのEBITDA(支払利息、税金及び減価償却控除前利益)倍率や、割引キャッシュ・フロー又は割引残余利益などの現在価値モデルを使用して買収対象会社を評価します。法務デュー・ディリジェンスは、過去の収益に影響を及ぼした出来事や今後予想される収益、キャッシュ・フロー又は残余利益に影響を及ぼし得る出来事について、更に有益な情報を提供することができます。このデュー・ディリジェンス情報は、買収対象事業をより徹底的に評価する上で、買主の役に立つかもしれません。

情報を取引の材料として使う

デュー・ディリジェンスで得られた発見は、しばしば重要な取引材料として利用可能です。これが特に当てはまるのは、売主が、提示価格の高さを正当化するために、事業について楽観的な見解を示して成功を強調するばかりで、欠点となり得る問題については十分な注意を払っていない場合です。

買主が、買収対象事業の収益モデルについての潜在的な問題又は課題や、完全には開示されていなかった隠れた負債を発見することができれば、この情報は、買収価格を引き下げる交渉において有益な材料となり得ます。

この取引を成立させるために何をする必要があるか

「何を買おうとしているのか」と「どのくらいの価値があるのか」という問いの他に、尋ねるべき非常に重要な問いは、「この取引を成立させるために何をする必要があるか」というものです。

この問いに答えるために、企業の所有者が代わることで重要な資産及び負債にどのような影響が及ぶのかを理解する必要があります。重要な契約に支配権の変更に関する規定が含まれており、相手方はM&A取引が完了した場合に契約を解除することができるのでしょうか。関連する規制当局の同意を事前に得ないまま企業の所有者が代わった場合、事業に不可欠な免許及び認可は終了するのでしょうか。

こうした問いに答えることで、買主が喜んで取引を完了させる前に講じるべき措置が分かります。多くの場合、このような措置は、取引を完了させるために満たさなければならない前提条件となります。

一連の表明及び保証に依拠することはできないのか

買主は、売主からかなり包括的な表明及び保証を得られる可能性があることを知っている場合、デュー・ディリジェンスを行うことに消極的であったり、「軽く」デュー・ディリジェンスを行ったりすることもあるかもしれません。

表明及び保証を通じた契約上の保護に依拠せずにデュー・ディリジェンスを行うメリットは、重要なデュー・ディリジェンス問題が取引完了後に明らかになった場合、表明又は保証の違反を根拠とする訴訟に頼らなければならないのとは対照的に、こうした問題に前もって対処できることです。つまり、デュー・ディリジェンスを実施することで、買主にとってこうした潜在的な問題に対処するための選択肢が増えるということです。デュー・ディリジェンス問題の中には、極めて重要なものもあるため、買主が単純に取引を撤回することを希望する場合があります。また、他にも、買収価格の引下げ交渉を望むほどに、買主による買収対象の評価に影響を及ぼすものもあります。一部のデュー・ディリジェンス問題を取引の前又は後に是正することを買主が求める場合があり、多くの場合、このプロセスにおける売主の協力が極めて重要となります。

デュー・ディリジェンスにより、買主はより多くの情報を知ることができます。全体的には、有している情報は少ないよりも多い方が、買主の立場は優位になり、買主にとって選択肢の幅が広がります。表明又は保証の違反に対して請求を行うことは、不確実なプロセスでもあります。買主は、裁判所において、その違反により損失を被ったこと、及び、損失を軽減するための義務を果たしたことを立証する必要があります。

違反に対する請求を行う能力に知識が及ぼす影響

買主は、取引書類に署名する前に関連する状況を知っていた場合、表明又は保証の違反に対して損害賠償を請求することができないという前提に立ち、デュー・ディリジェンスを行うことに消極的な場合もあるかもしれません。そのような状況では、買主が違反により損失を被ったことを立証するのは難しいかもしれません。売主は、買主が支払おうとする価格を決定する際にこの情報を考慮すべきであったと主張するでしょう。

しかしながら、必ずしも、より多くの情報を知っていることによって買主が不利な立場に置かれるとは限りません。売主が、取引書類において、問題となっている状況に関連して買主が被った損失について買主を補償することに同意していれば、買主は、取引書類に署名する前にその状況を知っていたとしても、そのような補償に基づいて請求を行うことができるかもしれません。

デュー・ディリジェンスのリスク方程式

2002年、当時のドナルド・ラムズフェルド米国防長官は、よく知られているように、(イラクが大量破壊兵器を保有している可能性があるという文脈において)以下のように発言しました。

知られていると知られていること(known knownsがあります。すなわち、我々が知っていると我々が知っていることがあります。

我々はまた、知られていないと知られていること(known unknownsがあることも知っています。すなわち、我々が知らないことがあるということを我々は知っています。

しかしながら、知られていないと知られていないこと(unknown unknowns、すなわち、我々が知らないということを我々が知らないこともあります。」

デュー・ディリジェンスは、「知られていないと知られていること」を「知られていると知られていること」に変え、なるべく多くの「知られていないと知られていないこと」を「知られていないと知られていること」又は「知られていると知られていること」に変えようとするプロセスであると考えることができます。

事業への投資には、多くの潜在的なリスクが存在します。デュー・ディリジェンスにより、こうしたリスクに関する理解を深めることができます。デュー・ディリジェンスにより、存在する可能性があると我々が考えているリスクのうち、どのようなものが実際に存在しているかを確かめることができます。また、デュー・ディリジェンスにより、「知られていないと知られていないこと」、すなわち、これまで存在する可能性があると考慮したことすらなかったリスクを特定し、そのようなリスクを理解することができるかもしれません。

知られているリスク及び知られていないリスクは、更なるデュー・ディリジェンスを通じて、価格調整を通じて、又は、表明及び保証、補償、前提条件、取引完了前若しくは取引完了後の誓約事項並びに/若しくは買収価格の一部留保などの契約上の保護を通じてこれらの理解に努めることで、対処可能です。

つまり、これがデュー・ディリジェンスのリスク方程式です。通常、買主には、特定のレベルの投資リスク許容度があります。事業に固有の集合的なリスクが、買主が負担できないほど高いレベルのリスクである場合、そのような取引リスクには、より広範囲のデュー・ディリジェンス、買収価格の引下げ又は契約上の保護の強化を通じて対処することができます。

適切な法務デュー・ディリジェンス・チームを選ぶ

自社側でデュー・ディリジェンスのプロセスを管理する人物を選ぶ

デュー・ディリジェンスを進めると決定したら、自社側でデュー・ディリジェンスのプロセスを管理する人物として誰を選ぶのかというのは、非常に重要な問題です。この人物は、デュー・ディリジェンスを行う範囲、重視すべき点や、買主にとって商業的に重要で不可欠な問題を外部アドバイザーに伝えるという重要な役割を担います。この人物が、取引、その構造、買主の戦略的・商業的目標、買主による評価の根拠、主要なバリュー・ドライバー及び主なリスクに関する懸念点を理解していることが重要です。

外部法律顧問を選ぶ

法務デュー・ディリジェンス及びM&A取引において豊富な経験を有する外部法律顧問を選任することが重要です。買収対象会社の業界における経験も有していることが理想的です。例えば、石油・ガス探査事業に関するデュー・ディリジェンスを実施するのと、ITソフトウェア会社に関するデュー・ディリジェンスを実施するのとはかなり異なります。デュー・ディリジェンスを実施する際には、毎回、各業種に共通する法律の構造をある程度理解する必要があります。

デュー・ディリジェンス作業が外部法律顧問の若手弁護士に回されるというのは非常によくあることです。多数のM&A取引を経験し、重要な問題をその発生時に特定するのに必要な知識及びスキルを身に着けた弁護士が、デュー・ディリジェンスのプロセス全体を管理し、監督しなければなりません。この経験豊富な弁護士が自らデュー・ディリジェンス文書の全てを検討できる可能性は低いですが、この弁護士が、文書レビューにおいて注意すべき問題について弁護士チームに指示を出し、プロセス全体を注意深く監視することが極めて重要です。

協力する

典型的なM&A取引では、買主は通常、法務、財務及び事業又は技術に関するデュー・ディリジェンスを行います。買主は、環境、不動産、IT、プライバシー及びデータ保護、税務、戦略、贈収賄・腐敗行為防止並びに経歴に関するデュー・ディリジェンスを行うこともあります。

各デュー・ディリジェンス・アドバイザーが、他のアドバイザーと連携し、各アドバイザーからの照会分野や各アドバイザーのデュー・ディリジェンス結果を把握していることを、デュー・ディリジェンスのプロセスを管理する買主の職員が徹底することが重要です。

あるアドバイザーが取り上げたデュー・ディリジェンス問題が、別のアドバイザーが取り上げた問題に関連している場合も多くあります。適切に実施されたデュー・ディリジェンス・プロセスは、デュー・ディリジェンスの盲点を回避するために、全て���アドバイザーの分析を統合します。

デュー・ディリジェンスを行う

デュー・ディリジェンスの範囲

デュー・ディリジェンス・チームを選んだら、全員がデータ・ルームに飛び込んでデュー・ディリジェンスを始める準備ができています。しかしながら、デュー・ディリジェンスの範囲に含まれるものと含まれないものや、最も重視すべき点について議論せずにデュー・ディリジェンスを始めてしまうという状況がよく見受けられます。

買主及び外部顧問は、調査の最も重要な分野を理解するために協力すべきです。このためには、事業、収益を生み出す方法、主な費用と負債、最も重要な資産及び問題が発生し得る危険な場所を理解する必要があります。外部顧問は、M&A及びデュー・ディリジェンスの経験を提供すべきであり、買主の内部デュー・ディリジェンス・マネージャーは、それに買収対象会社の業界、買主が重視する分野及び買主と買収対象の関係についてのより深い理解を付け加えるべきです。

どんな場合でも通用するようなデュー・ディリジェンスの方法は存在しません。工業又は製造業に関するデュー・ディリジェンスは、環境及び不動産に関する問題や販売及び供給に関する契約をより重視するかもしれませんし、他方で、消費者向けの業界に関するデュー・ディリジェンスは、ブランド、知的財産、市場勢力図や市場拡大の機会をより重視するかもしれません。

非開示の姿勢を克服する

新興市場や、売主がM&Aプロセスに精通していない場合においては特に、売主が、買収対象に関する否定的な情報を買主に開示することは自らの利益にならないと考えるのは珍しいことではありません。このような状況では、売主は、買主に「欠点も含めてありのままの」事業の姿を示すのではなく、最高値を引き出すために事業の最も良い面を売り込もうとしています。

買主はこの姿勢を受け入れる以外に余り選択の余地がないという状況もあります。例えば、関心を有する他の買主が現れる前に迅速に取引を完了する必要がある場合や、売主が全ての交渉力を有している場合です。この場合、買主は、契約上の保護を通じて、又は、(デュー・ディリジェンスを実施することのできない)潜在的なリスクを考慮して買収価格を決定することにより、可能な範囲で自らを守る努力をすべきです。

しかしながら、この問題に取り組む余地がある場合、取引書類に含まれる表明及び保証を限定するために、デュー・ディリジェンスのためのアクセスを提供し、一定の事実について開示することが、売主自身の利益になり得ることを売主に説明するのも意味があることかもしれません。

ベンダー・デュー・ディリジェンスを利用する

入札者が買収対象事業に固有の潜在的なデュー・ディリジェンス問題を十分に把握するのを支援するために、売主がまとめたデュー・ディリジェンス報告書がオークションで使用されることもあります。ベンダー・デュー・ディリジェンスは、包括的ではないことも多いため、買主自身のデュー・ディリジェンスに代わるものではありません。しかしながら、売主が、ベンダー・デュー・ディリジェンス報告書に含まれる情報について、取引書類において表明及び保証を行うか、又は補償を提供する用意がある場合は特に、デュー・ディリジェンスのプロセスを始める上で役に立つことも多くあります。

デュー・ディリジェンスのタイミング

デュー・ディリジェンスは、デュー・ディリジェンス資料が手に入り次第開始するのが理想的です。デュー・ディリジェンスで明らかになった点について、取引書類において対処する必要があるかもしれません。後になって取引書類の変更を要請するという事態を回避するため、買主は、可能な限り早く自身のデュー・ディリジェンスを実質的に終わらせることを目指すべきです。にもかかわらず、デュー・ディリジェンスが取引書類の署名までずっと続くというのはかなり一般的です。その主な理由は、売主がデュー・ディリジェンス文書をまとめ、追加の質問や追加の文書要請に答えるのに時間がかかるためです。

最初のデュー・ディリジェンス要請リスト

多くの場合、デュー・ディリジェンスのプロセスは、買主が文書及び情報を求める広範な要請リストを売主に送付するところから始まります。この最初のステップの引き金を引く前に、デュー・ディリジェンス要請リストが買収対象の業種及び関連する主要分野の焦点に合わせて調整されているよう徹底することが重要です。

売主の中には、最初のデュー・ディリジェンス要請リストがもっと包括的であれば、大量の情報要請を一度に受領して対応することが可能であるため、そのようなリストの方が良いと考える人もいるかもしれません。しかしながら、多くの場合、要請リストが非常に長いと、単純に事業運営から離れて買主のために要請された情報をまとめる時間がない売主や買収対象会社の意欲を失わせることになります。

ここでは、適切なバランスを見つけることが重要です。時には、最初の要請は、交渉決裂の原因となってしまう可能性のある問題について調査するために、取引の核心に触れる主要な問題に的を絞った非常に短いリストから始め、その後、買収対象会社の事業についてより深くデュー・ディリジェンスを行うことを決定するのが一番良いかもしれません。

売主及び買収対象とのコミュニケーション

関係者と深く関わる可能性のあるデュー・ディリジェンスのプロセスにおいて、売主や買収対象との間で協力的な関係を保つためには、買主のデュー・ディリジェンス・マネージャーが売主や買収対象との連絡手段を管理することが重要です。買主側の複数のアドバイザーが、買収対象又は売主の複数の職員に大量の要請を送り付けて困らせるという状況は回避すべきです。このような状況では、買収対象及び売主が非協力的な態度に転じる可能性があるというだけでなく、記録を付けるのも非常に難しくなります。

デュー・ディリジェンスに関する全てのコミュニケーションを買主のデュー・ディリジェンス・マネージャーを通じて行うことには、主に2つのメリットがあります。これにより、買主のデュー・ディリジェンス・マネージャーは、これまでに全てのアドバイザーが行った質問及び受領した回答を記録することができ、また、デュー・ディリジェンスのあらゆる流れの中で現在起こっていることを理解し、アドバイザーの見解に関連する範囲で、アドバイザーの間で情報を共有することができます。

デュー・ディリジェンス報告書

どのような種類の報告書が必要か

デュー・ディリジェンスの最終成果物は、外部顧問が検討した全ての文書を要約した、電話帳ほどの厚みのある報告書から、最も重要な問題を箇条書のリストにまとめた、買主の取締役又は投資委員会に対して行われるパワーポイント・プレゼンテーションのスライド1枚まで、様々です。買主は、デュー・ディリジェンスのプロセスから得る必要があるものを検討し、この点について外部顧問と話し合うべきです。

10-15年ほど前から、デュー・ディリジェンス報告書のトレンドは、検討した全ての文書をまとめた長文の要約を廃止し、「例外」のみを報告するというものになりました。これは、デュー・ディリジェンス報告書で言及されるのは、デュー・ディリジェンスを実施する中で明らかになった問題のうち、その価値又は影響が一定の重要性基準を超えるもののみであることを意味しています。そのような基準は、多くの場合、金額で設定されていました。

重要な問題のリストは直接デュー・ディリジェンス問題の核心に触れるものですが、この方法には問題となり得る点が2つあります。第一に、重要性の水準を金額で設定していると、定量化できる事業への影響がない重要な問題や、単に金額では計測されない影響を及ぼす重要な問題を見逃すリスクが存在する可能性があります。例としては、戦略的、文化的又は評判に関する性質を有する極めて重要な問題が挙げられます。第二に、重要な問題のリスト単独では、あまり使い勝手が良くないかもしれません。なぜなら、そのような問題は、より完全な文脈に関する追加の説明がなければ、明確に理解することができない可能性があるためです。この2つの問題に対処するために、外部法律アドバイザーは、エグゼクティブ・サマリーにおいて重要な問題のリストを記載し、後半で検討した文書及び(金額で設定された重要性基準には必ずしも達していない)その他の問題についてより広範に説明する報告書をまとめる場合も多くなっています。

報告書を作成し、これに基づいて行動するための時間はどの程度あるか

理想的なデュー・ディリジェンス報告書の種類の選択は、デュー・ディリジェンスを実施し、報告書をまとめるために費やすことのできる時間に影響される可能性があります。取引が非常に速く進んでおり、両当事者が可能な限り速やかに署名に到達することを希望している場合、デュー・ディリジェンスの実施により達成可能な最善の結果は、買主とその外部顧問の間で行われる会議又は電話で議論され、更に詳細に説明される問題をリストにまとめたものかもしれません。

デュー・ディリジェンス報告書における勧告

優れたデュー・ディリジェンス報告書は、デュー・ディリジェンスで特定された重要な問題を列挙するだけでは不十分です。各問題の対処方法に関する勧告も記載すべきです。このような勧告は、デュー・ディリジェンスで明らかになった情報を利用する最善の方法を理解する上で非常に重要です。報告書に記載される可能性のある勧告は、追加情報の要請、更なるデュー・ディリジェンスの実施、買収対象に関する買主の評価において情報を考慮すること、取引若しくは買収価格の支払の再構成、是正措置の完了を取引完了の前提条件として取引書類に記載すること、取引完了前若しくは取引完了後の約束、又は関連するリスクを補償でカバーすることなど、多岐にわたります。

報告書を検討する必要のある者又は報告書に依拠する必要のある者は誰か

必要な報告書の種類を決定する上で、報告書を検討する必要のある者又は報告書に依拠する必要のある者は誰かを検討することは重要です。融資を行うために買主の外部顧問が作成したデュー・ディリジェンス報告書に依拠する必要のある出資者はいますか。表明保証保険が必要になると予想していますか。この場合、保険会社は、報告書を検討することを希望し、報告書に依拠する可能性もあります。1種類の報告書のみを作成すれば済むように、報告書をどのように利用するつもりなのかを最初から理解しておくことが不可欠です。

報告書を取引完了後の手引として利用する

買主が、外部法律顧問に、検討した全ての法律文書を要約した詳細なデュー・ディリジェンス報告書を作成させようとする理由の1つは、この種の必読書が、事業の法律構造に関する非常に有益な取引完了後の手引であるからです。この種のデュー・ディリジェンス報告書により、買主は、一目見て、どのような法律文書が存在するか、及びその主要な条項を理解することができるはずです。

ディスクロージャー・レター

開示の効果

取引書類には、売主が、ディスクロージャー・レターで開示された事項に関する表明、保証又は補償の違反について、買主に対して責任を負わない旨が明記されているかもしれません。

ディスクロージャー・レターは、売主が署名し、取引書類の署名と同時に買主に交付されるレターです。これには、開示される明細書又は情報のリストが含まれ、買主に提供される文書に言及している場合があります。開示は事実上一般的なもので、買主は特定の区分(例えば、公開情報の検索結果又はデータ・ルームに保管された全ての資料など)において全ての情報を知っているとみなされます。開示は特定の情報について行われる場合もあり、これは多くの場合、特定の表明、保証及び/又は補償を限定することを目的としています。

このような開示は、それが公正な開示である範囲で、関連する表明、保証及び/又は補償を限定するのみである旨が、取引書類に記載されることが多くあります。公正な開示とは、開示された事項の性質及び範囲を特定するのに十分な詳細情報を付して関連する事実を開示することです。

開示に関するデュー・ディリジェンス

ディスクロージャー・レターは、売主による表明、保証及び補償の範囲から潜在的な問題を切り分けることを目的としていることを踏まえると、「デュー・ディリジェンス」を行うべき重要な情報を提供する文書と言えます。取引書類における買主の契約上の保護がこれらの分野に及ばないことを踏まえると、買主がディスクロージャー・レターで言及されている問題及びこれらの問題が買収対象事業に及ぼす影響の範囲を理解することは極めて重要です。

買主は、売主に対し、可能な限り早くディスクロージャー・レターの草案を提供するよう求めるべきです。しかしながら、ほとんどの場合、ディスクロージャー・レターは目標署名日の間際に提供されます。買主は、開示された情報について徹底したデュー・ディリジェンスを実施するのに十分な時間が買主にないほど後の段階になってから売主が行った追加の開示に対して抵抗すべきです。

覚えておくべき重要な点

デュー・ディリジェンスは、まさにその性質上、完全に包括的なプロセスではありません。デュー・ディリジェンスを行う「標準的な」方法はありません。投資しようとしている買収対象会社に合わせてこのプロセスを調整するべきです。法務デュー・ディリジェンスを最大限に活用するために、重視すべき重要な分野を理解し、それを外部顧問に伝える必要があります。デュー・ディリジェンスのプロセスを理解している経験豊富な外部顧問に依頼すべきです。外部顧問には、最も有益な形式で作成されたデュー・ディリジェンス報告書を提供してもらうべきです。報告書には、取引書類の交渉において重要なツールとして使用できる情報が記載されるべきです。法務デュー・ディリジェンスは、買収しようとしているものの内容やその価値を理解する上で役に立ち、時には、悪い取引を回避する手助けとなるかもしれません。法務デュー・ディリジェンスは、買収価格の引下げ又は取引書類における契約上の保護を交渉するためのツールとなり得ます。

法務デュー・ディリジェンスは時間のかかるプロセスであり、多くの場合費用もかさみます。しかしながら、適切に実施すれば、M&A取引のプロセス全体において不可欠なものとなります。

執筆者:チン・ヨー、香港パートナー

クライアントはアシャーストの幅広い実務実績に言及し、“アシャーストはアジアやヨーロッパ地域で展開するあらゆるビジネスについてアドバイザリーを提供することができる”。またユーザーフレンドリーであることが高く評価されており、“アシャーストには経験豊富で親しみやすく、効率の良い弁護士チームが在籍している”と評される。Chambersアジア太平洋地域 2017版

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